2018年4月15日日曜日

コモンウエルス・ゲーム 2018(5):マラソン、ゴールドコースト・ブリッジの悲劇

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● マイケル・シェリー: この時のコーチはモネゲテイである

【男子マラソン】
 男子マラソンは40kmで思いもよらなかったドラマが起こった。
 こんなすさまじいのは過去にみたことがない。
 トップはスコットランドのカムラ・ハウキンズ。
 2位のマイケル・シェリーに2分の差をつけていた。
 シェリーからは彼の姿はまったく見えない。
 残りは3キロにも満たない。
 優勝は彼に確定していた、と誰れもが思った。
 だが、だが!!!
 ゴールドコースト・ブリッジの手前で帽子を脱いで、歩道に投げる。
 この暑さだ、これまでかぶっていた帽子を捨てるとは。
 かぶっていたほうがこの暑さでは絶対に有利なはずである。
 こういう仕草は昔、瀬古利彦のレースでみたことがある。
 後の話では帽子の重さが気になった、という。
 さほどにこの時彼はダメージを負っていたということである。
 高橋尚子はシドニーオリンピックでサングラスを投げ捨てて気合を入れた、という有名な話が残っている。
 帽子を捨ててすぐにだ、彼が突然ヨロヨロとよろめいて歩道に倒れ込む。
 エーッツ、と見ている側が声をあげるほどに強烈なものだ。
 手をついて倒れるといった感じではない。
 体がそのまま倒れた、という感じに思えた。
 何が起こった、ケガはないか?
 起き上がろうとするが身体がついていかない。
 それでも必死に立て直す。
 繰り返し繰り返してやっと何とか立って再び走り始める。
 ときどきガードレールをつかみながらフラフラとヨロヨロとだ。
 ゴールドコースト・ブリッジに入る。
 この中間が40kmポイントになる。
 40kmのラインを越えたところで再び大きく倒れ込む。
 立とう立とうとあがいてあがいてあがきまくる。
 でも女神は微笑まない。
 ガードレールをつかもうとする手にも力がはいらず、掴めない。
 気温27度という猛暑の中のマラソンである。
 40kmを走ってきて起きた壮絶な悲劇的アクシデントである。
 彼の立ち上がろうというもがきに涙が出るほどである。
 しかし、わずかの力も残っていなかった。
 一絞りのスタミナも枯渇していた。
 絶望的なあがきの後、力尽きて車道側に倒れ込んだ。
 起きることもできず、ただ車道に横たわる。
 彼のマラソンはここで終わった。
 マラソンの魔物は35キロに住む、と言われている。
 彼には40キロで魔物に喰い殺された、ということになる。
 「ゴールドコースト・ブリッジの悲劇」である。

 2位であったマイケル・シェリーがブリッジの向こうに姿を現し、倒れている彼の横を通っていく。
 この時点でシェリーの優勝が決まる。
 シェリーにとってはあまりに幸運なたなぼたの勝利である。
 前回のグラスゴー大会に続いてコモンウエルスゲーム・マラソン連覇ということになった。
 シェリーはゴールドコーストの出身なのでひときわ人気が高い。
 ヘレンズベイル・ハイスクールの出身である。
 クラスが一緒になることはなかったが息子と同学年生である。


● ハイスクール時代のマイケル・シェリー

 シェリーはこれまでゴールドコースト・マラソンを走ったことはない。
 10km、ハーフには出場しており、今のハーフのレコードは彼が作ったものである。
 地元でありながら、一度もゴールドコースト・マラソンを走っていないというのは、彼にとって大きな精神的負荷となっていたはずである。
 地元民もシェリーはいつゴールドコースト・マラソンを走るのかと期待していた。
 そして、今日やっとその日が来たというわけである。
 そしてさらに、全く信じられないような好運によって優勝の高見へといざなわれた。
 この男、どこまでツキに恵まれているのか。
 「ゴールド・コースト・ブリッジの悲劇」はこの地元民マイケル・シェリーの強運とともに語り伝えられるだろう。


● 男子マラソンスタート
 ゴールドコーストマラソン連覇のケニヤのムンガラも出場している
 

● 男子マラソン5km付近
 
 
● 男子マラソン10km付近

 
● 男子マラソン25km付近 


● 男子マラソン35km付近(サーファ-ズパラダイス) 


● 男子マラソン38km付近(メインビーチ) 


● 男子マラソン40km ゴールドコースト・ブリッジの悲劇 


● 男子マラソン40km マイケル・シェリーがトップへ


● 男子マラソン フィニッシュ:マイケル・シェリー コモンウエルスゲーム・マラソン連覇


● 男子マラソン:2位から5位まで (4位から5位の間で映像が止まります、ポイントを動かす必要があります)


● 男子マラソン: マイケル・シェリー インタビュー


2018年4月15日 17:01 発信地:ゴールドコースト/オーストラリア
http://www.afpbb.com/articles/-/3171261?cx_position=13

マラソン独走選手が酷暑で倒れ救急搬送、
対応に批判の声も 英連邦大会

【4月15日 AFP】オーストラリア・ゴールドコースト(Gold Coast)で開催中のコモンウェルスゲームズ(Commonwealth Games、英連邦競技大会)で、15日に行われたマラソン男子のレース中に、首位を独走していたスコットランドのカラム・ホーキンス(Callum Hawkins)がうだる暑さの中でコースに倒れ込み、病院に搬送された。

 気温が30度に迫るなか、ホーキンスは2位に2分以上の差をつけていたものの突如崩れ落ち、道路脇に突っ込んだ。
 レースを続けようとするも歩くことすらままならず、明らかに苦しんでいる様子のホーキンスはその直後、ゴールまで約1.6キロのところで道路脇のフェンスに激しく倒れ込み、地面に頭を打ち付けた。

 救助の到着が待たれるその間にオーストラリアのマイケル・シェリー(Michael Shelley)がホーキンスを追い抜き、金メダルを獲得した。

 スコットランド選手団によると、救急車で病院に搬送されたホーキンスは危険な状況にはないとしている。

 2時間16分46秒で大会連覇を達成したシェリーもまた、暑いコンディションに苦しんでいたと明かした。

 シェリーは、ホーキンスが倒れているのを目にして「何が起こっているのか分からなかった」とすると、
 「(コース脇で)友人たちがカラムに問題が発生しているから、頑張れと励ましてくれた。彼を目にした後は踏ん張ろうとした」
 「正直なところフィニッシュできてよかった。手がけいれんし始めていたから、フィニッシュラインまでもてばいいなと考えていたんだ」
と語った。

 暑さに屈した選手はホーキンスだけではなく、タンザニアの選手はゴール直後に倒れ込んで車いすに乗せられ、もう一人のタンザニア人選手もゴール直前に倒れて救急車に乗せられた。
 レースに臨んだ24人中7人が途中棄権に終わっている。

 テレビでレースを観戦していた視聴者は医療関係者の到着が遅くなったことで大会組織委員会を批判するとともに、倒れたホーキンスの写真を撮っていた沿道の観客にあきれていた。

 その組織委はホーキンスの写真を撮影していた見物人を批判し、さらに医療班の対応に時間がかかったことを擁護した。

 組織委の最高責任者を務めるマーク・ピータース(Mark Peters)氏は
 「他の方々と同じように、本日のマラソン終盤にカラムの様な素晴らしいアスリートが倒れてしまったところを目にし、心苦しく感じました。
 それとともに、写真を撮ることを選んだ少数の見物人たちの振る舞いを憂いました。
 大会理念に沿ったものではありません」
とコメントした。

 組織委によると無線をつけた医療スタッフは500メートルごとにコース上で待機していたが、ホーキンスからの要求を受けてから対応したという。

 マラソンの競技規則では、医療扶助を受けた場合にランナーは失格となる。
 ピータース氏は救助が「応答ガイドラインに沿って、応答期限以内に」到着していたと話している。
(c)AFP

 後からヒューマニテイックな能書きを言ってもしょうがあるまい。
 シェリーとの差は2分だ。
 ゴールまでは2.2キロで「約1.6キロ」ではない。
 もし3分ほど医療班がかけつけたのなら、問題になることはないはずだ。
 関係者がランナーに触れるとその場でランナーは失格となる。
 手を出しにくい状況であったということだ。
 脱水症状は真冬の箱根駅伝でもよく起こっている。
 関係者を責めるのは少々酷というものではないだろうか。
 また写真を撮っていた人に対する非難も的外れとしか言いようがない。
 交通事故に出会ったわけではない。
 40kmを走ってきた普通の人よりはるかに鍛えられた強健のランナーだ。
 一般常識から言ってよくあるランニングのアクシデントに見舞われただけのことである。
 もし写真を撮っている見物人が非難されるなら、その前に彼の状態を延々と映しているテレビ放送が糾弾されるべきであろう。
 それを「テレビでレースを観戦していた視聴者」とは自称ヒューマニストの極限を目指すことをしない安す者の野次馬でしかない。
 スポーツには幾分かの危険性が含まれている。
 だからと言って危険だからスポーツはやめるべきだ、とはならない。
  

【女子マラソン】


● スタート




● 後半へ






● フィニッシュ



【追補】

 Gold Coast Bulletin
 `  マイケル・シェリー 東京オリンピックを視野に






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