2018年7月1日日曜日

ゴールドコーストマラソン 2018 (3):ハーフマラソン、 2時間04分31秒

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● start前

  今回はこれまでと違って緊張感がまったくない。
 これまでは練習に精力を注いでおり、本番は抜け殻みたいになっていることが多い。
 それでも本番ともなれば、それなりの高揚感が噴き出てくるものである。
 ところが今回はそれがない。
 いけるところまで行って、あとは歩いてもいいや、といった行き当たりばったりの感じである。
 前回、前々回と過去2回のアクシデントで歩くような感じでゴールしているので、期待するものがないのかもしれない。
 行けるところまでとは、スプリットで5kmまで31分、10kmまで30分、15kmまで29分、そして20kmまで30分、最後の2.1kmを6分半で、合わせると2時間6分台となり、練習ではまったく届かなかったキロ6分切りの高い目標だがそれを目指して突っ込んでしまえ、といったいい加減なものである。

 ウォーミングアップは軽くしておく。
 適当に走れればいいので、しっかりやる必要もない。
 スタートは一番最後からで、15分遅れを考えていたのだが、10分ほどの遅れでのスタートになってしまった。
 ということは10分を過ぎるとほぼ全員のスタートは終えているということでもある。
 スタートゲートまで最後尾からテレテレ歩いていくと、黄色いぬいぐるみがそばによってきて「走れ」というポーズで腕を振る。
 「もう、うるせいな!」
と思いながらゲートをくぐってからランニングにはいる。
 でもやはり2キロくらいで人間の壁に阻まれる。
 2,3度足を止めることになる。
 これがあるからいやなのである。
 15分遅れくらいでスタートすると、後尾の人間がばらけるからそれを狙っていたのだが。
 一人で練習しているので集団の中で走るのが嫌いなのである。
 ペースがつかめなくなる。

 すぐに額に汗が浮かぶ。
 少々最低気温が’高い。
 6時スタートなので暗闇の出発になる。
 日が昇り始じめるが曇天模様で陽射しはまったくない。
 陽射しはスタミナを奪う。
 一人で走っているときは、柔らかい陽射しは時に気分をのせてくれる。
 だが本番では、絶対にないほうがいい。
 もちろん風もない。
 コンデションとしては最高の部類である。
 でも、やたら喉が渇いている。
 体調不良の信号だろうか。
 朝起きてこれまで水分は口にしていない。
 これはいつものことで、ハーフを走るのにほとんど水とらない。
 でも今日は喉が渇いてヒリヒリしている。
 最初の給水所で少し含んで喉をうるおす。
 これで何とか渇きは収まった。
 最初の給水所で水をとったのは過去の記憶に全くない。
  
 コースは通常車道の片側を使うが、全面ストップなので反対側から車がくるわけでもない。
 よって時に反対車線を走って集団から離れるようにする。
 5kmは30分47秒、ほぼ31分の設定通りである。
 10kmは29分10秒、30分の予定なので50秒も早い。
 これはすばらしい。
 このまま行けるところまで行く、足がいうことをきかなくなったら歩けばいいや、である。

 10kmはパラダイス・ポイントにありここは車のスピードを規制するために道路に凸状の盛り上がりがあり、これが非常に心理的な負担をかける。
 過去に何度も転びそうになっているからである。
 折り返すので往復で10カ所くらいの凸面を通過する。
 スピードをセーブして、足元に注意を集中して走るのであるが、それでもつまずきそうになる。
 何とかここを通り抜ける。

 さてここからである。
 このスピードでこのまま行かれるのか、体力はがもつのか、それともバテて歩くかの判断になる。
 行くことにしているから行くだけである。
 前は見ない。
 顔は上げずに足元だけを見る。
 前をみると気力が萎えてくるからである。
 なにしろ延々と人人人である。
 ただ流れゆく路面を目に映すだけで、考えないようにする。
 背中に「2:20」と書いてある旗担いだフラグマンを追い抜く。
 このフラグマンは前後に2人いて、この間を走っていけば2時間20分でゴールできますよ、ということである。
 私は10分遅れほどでスタートしているので、このフラグを追い抜いたということは2時間10分を切ってゴールできるということになる。
 また、水を含む。
 これは気分転換のためである。
  
 15kmでどうなっているのかタイムを確認しようとしたが、肝心の「15」という距離表示板がない。
 なぜだ!
 見落としたわけでは絶対にない。
 「ない」のである。
 16kmで測定して「34:33」である。
 ということはどういうことになる。
 計算ができるほどもう脳は動いていない。
 残すはあと5kmだ!、潰れるまで行ってしまえ! である。

 ランドエンドブリッジを越える。
 ここが最後の大きなアップダウンである。
 ここまで走ってきてこのアップダウンはさほどの高さがあるわけではないのだがきつい。
 そのキツさでスピードダウンする。
 そこを狙ってカメラのフラッシュになる。
 数人のカメラマンが左右に構えているのである。
 ここまでくるといつやめても言い訳がたつような状態になる。
 「いいんだよ、走るのをやめても
というささやきが頭の中に満ち溢れてくる。
 何も考えず、顔を上げず、地面だけを見て、走る機械になりきることにする。
 横の遊歩道は練習でいつも走っているところで周囲の風景はおなじみのものである。
 でも見ない。
 見ると「まだここか」という絶望感が襲ってくるからである。
 ただただ足が止まるまで走ることに徹する。

 オーストラリアの女性が斜す後ろに並びかけてくる。
 どうも私を目標に走っているようだ。
 それは構わないが、ハーハーと息が荒いのだ。
 それが気になって神経がささくれてくる。
 引き離すのだが、しばらくするとまた後ろに息が聞こえる。
 頑張っていることはわかるが、こちらには迷惑なことだ。
 少し離れて走ってもらいたいのだが、そうすると彼女の緊張が切れてしまうのであろうか。
 こちらも引き離しきれないので、この女性の息遣いを聞いたり聞かなかったりが2,3キロ続く。
 もしかしたら、この老人のスピードが落ちたら抜かそうとか思っているのかもしれない。

 ペリカンシーフードを曲がる。
 ここからつらくなる。
 昨年、一昨年と歩き始めることになった地点である。
 残りは3キロなのだが。
 今年は何とか潰れることなくゴールまで行かれそうな予感がする。
 女性はどうか、地獄の3キロである。
 気配が消えた。
 息遣いが消えた。
 やはりここはきついか。
 まあここまでよく頑張ったと思う。
 目いっぱいで必死にくらいついてきたのだろうが、あの息遣いでは残る2キロ余は結構つらいのではないかと思う。
 
 護岸道路からレンフォックス公園横通りを走る。
 走る機械は感傷を持たない。
 頭を空っぽにする。
 ここでも目線は地面に置いたままである。
 顔を上げると気分が萎える。
 まだ足は動いている。
 ロダークリークの橋を越えて少しいくと20kmである。
 完走は目前である。
 足はまだ潰れない。
 10kmから20kmまでを58分少々でいっている。
 ということは2時間08分台は出る。
 全コース21.1kmを平均キロ6分で走り切ると、約2時間06分30秒になる。
 残りの1.1kmを6分半で行かれれば2時間04分台になる。
 2008年にランニングを引退するつもりで走った「ラストラン」がこの同じコースで2時間04分半である。
 あれから10年である。
 あの時に匹敵する記録がでるかも。
 ひょんなことで走りを再開することになり4年目になる。
 
 赤の点滅信号を越える。
 次に見える点灯しっぱなしの赤信号が「取り付け道路ですよ」というサインである。
 これがやたら遠くに見えるのである。
 走っても走っても縮まらないという気分になる。
 後で振り返るとラスト5キロの風景の記憶がほとんどない。
 ひたすら地面と睨めっこしており、今走っている場所を確認するためにときどき顔をあげた程度なのである。
 
 取り付け道路はゴール手前300mからはじまる。
 ここの曲がりで縁石にぶつかりそうになる。
 ようようたどりついたが足がふらついている。
 まっすぐ走るのならいいが、カーブでは体を十分に支えきれないのだ。
 250mゲートをくぐる。
 250mといえばラストスパートに入っていくところである。
 だがここ、非常に狭い。
 気力を絞って少しだけでも足を動かしたいのだが。
 それができない。
 余力は残っていない。
 あまりに大勢のランナーが前にひしめいている。
 無理に走れば危険がお待ちかね、ということにもなりかねない。
 間違いなく安定を保持できるだけの力はもうない。
  ハーフ参加者は1万人とアナウンスされていた。

 結果は「2時間04分33秒」である。
 これは手元の時計である。
 公式タイム(ネット・タイム)はまだだが、夜にでも閲覧できるようになるであろう。
 せいぜい5秒とは違わないはずである。
 すごい記録が出たものである。
 恐ろしい。
 潰れることを承知で突っ走って、よく21kmももったものだと自ら感心してしまう。
 ゲート上の電光掲示は2時間16分台であった。
 
 よく走れた原因はというと気象条件がめちゃくちゃよかったということが第一に挙げられるだろう。
 陽射しがなくいたぶられることがなかった。
 そのため体が最後までもった、ということである。
 そして2番目ははだしウォーキングでフクラハギが強く鍛えられたということになる。
 それでもゴールして足を止めたら急激に足の裏がつってしまった。
 やはり相当に無理をして走ったということなのだろう。
 家へ帰ったら、今度は左足親指の突き指がまた痛んできた。
 どちらもしばらくして直ってくれたのだが。
 そのくらいに走らないとタイムなどは出ないということでもある。
 まとめれば、今日はまるで緊張感もなく、期待もしていなかっただけに、イチかバチかでギャンブル的に走り、その結果として思ってもみなかったタイムを出してしまったレースになった、ということになる。
 

● すばらしい記録が出てしまった


【 7月01日 21.1km 2時間04分32秒 手元計時
5km    30:47      30:47
10km     29:10     59:57
15km     28:50   1:28:47
20km     29:18    1:58:05
21.1km   6:28    2:04:33
(注)15kmは計れなかったので補正値になる

 素晴らしい記録を祝って夜は「大樹」にいくことにする。
 立川こしら落語会が行われたところで3週間ぶりくらいになるか。


【公式タイム】
翌日、公式タイムを検索した。
下がウエブからプリントした証明書である。



 でもこれ黄色のタイム表示がやたら見にくい。
 デザインとして失敗である。
 ネットタイムを書き写す。
「  02:04:31 NET TIME 

 別欄でネットタイムと10kmスプリットその他を見てみる。



「2時間04分31秒」で自己計測より2秒速い。
 このタイムは10年前の記録とほぼ同じである。
 10年前はラストランということでタイムよりも、楽しんで走ったということもあるのだが。
 下がその10年前の公式タイムである。




 ということは、「キロ5分54秒」で、キロ6分を切っている。
  なを、ハーフの参加者は8,789人、カテゴリー順位は「8/34」、つまり34人中8位ということになる。
 公式タイムでは2時間16分少々、ゴール順位は5100番強。
 つまり最後尾からスタートしたので、ゴールまでに「3,600人」を抜いたということになる。
 ただただ抜き続けたということになってしまう。

 去年、一昨年なら「やっと終わった、もう21キロ走る必要はない」と安堵感が沸き上がってきたものである。
 でも今年はそれがない。
 「レースが終わった」と、それだけである。
 端から期待をしていない分、感激も低いのであろう。



● ゴール前 公式写真








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